「季節のはがき」2015.10.21
間 戸
間 戸(狭間)
闇を穿つ鮮やかな光。
迂曲する炊煙は、緩やかに絖のほつれを描き
間に沈潜する色彩の群れは、微光のもと濃密
な空間の襞に堆積する。私たち伊東工務店は、
狭間に耀映する光芒と綯い交る気配、素朴な
古格の確かな手触りを見つめ続ける。
川崎市立日本民家園
解説(間戸)
この勝手まどの名前しりませんか。とりあえず間戸としました。「文明は精度を追求する。文化はコクを追求する。」此処にそんなものはありません。
さて写真は、杉の節板を竪に7本、穿っただけの狭間(間戸)がある。この家の台所であり水船という外から水を導いた流しがある。常に流れる為、あふれた水はそのまま土間から外の排水口へむかう。川崎の日本民家園にある信越の家の一角である。ここでは順番で民家が公開され、囲炉裏に火がはいり、家じゅう煙でいっぱいになる。かつての暮らしの風景とは異なっていても、世代をこえた懐かしさがある。完全に凍結保存されていないところが魅力である。
現代住宅にはないこの闇、手ざわりの確かな光というほかに言いようがないが、縞状の光の帯に囲炉裏と近くのへっついの煙がまざりこの窓からその一部が外へ漏れ出す。煙はぐるぐる渦をまいて、ひかりに映されて流れていく。懐かしい光景がみえてくる。(昭和の時代の映画館の映写機の前の風景)かつてこの家に住んだ家族がいて、この家を建てた大工さんがいた時代があった。軟弱な体力ではここで生きることすら難しいような住空間である。どんな暮らしがあったのだろうか。想像の翼を広げても遠く及ばない。かつて生きるということは風土の支配され大地の鼓動の中にあった。生きる存在感は迂曲する梁の組み方にもみられ、家族と家の矜持を表しているかのようである。
川崎市日本民家園 信越の村